
HiphopによくみるRapのリリックはというと、取り分け“お金、女、車、銃、ストリートライフ、etc”の話が
多いものだ。中にはポジティブなメッセージのものもあるが、それはほんのごく一部だ。
彼らにとってRapというのは、ただストリートにおけるパワーとリスペクトを得るための手段、また貧困
の裂け目から這い上がるための手段でもあり、この世界に自分の想いや声を響かせたいという欲求
なのかもしれない。

多くのアーティストたちにとってライムを書くという事は、より強い自意識と自尊心を育てていくための
作業となっており、MCの本質とは立ち上がり、誰よりも前に出て、自分の意見をRapすることであり、
誰がなんと言おうと、力ずくでも自分の想いをこの世界に知らしめることである。

多くのラッパーたちは自らの優位を声高らかに宣言し、自分こそが紛れもなく最高なのだという確信を
求め、それによって自らの揺るぎないアイデンティティを確率しようとしている。そんな中、90年代
初頭に新たなムーブメントが誕生する。それが“Gospel HipHop(ゴスペルヒップホップ)”である。
一般のラッパーたちが“お金、女、車、銃、ストリートライフ、etc”など自分たちの地位、欲求について
ラップしている中、Gospel Hiphopのアーティストたちは“Jesus Christにある朽ちることのない希望
や真理、愛、また、Jesusに出会って自分がどれほど変わり、滅びに向かっていた人生から救われた
か、etc…“をリアルにラップしている。
本来、Gospel Musicとはただの音楽ジャンルではなく、300年ほど前、アフリカ人たちが奴隷として
アメリカに移住させられ、厳しい状況の中でゴスペル(神様の言葉)に出会い、人生が変えられ、
どんな厳しい状況にいようともゴスペルにある変わらない希望、愛、真理、力、喜びを歌いだした事
から始まっている。
そして今、Gospel Musicが”Gospel HipHop”という形でも表現されているのである。
アメリカにおいては”HipHop”は音楽を超えた“カルチャー(Culture)”であり、日本においても少し
ずつHipHopが若者たちの間で根付こうとしている。
現在のNYを中心とするGospel Hiphopのムーブメントはというと、、、、
NYはブロンクスにおいて年に一度、NYで最大のGospel HipHop野外イベント“Rap Fest”が行われ
ている。このイベントはすでに10年以上の歴史を持ち、出演アーティストは数えきれないほどである。
また、彼らは定期的に”SalemCoffee House”というイベントを行っており、アメリカ国内からアーティ
ストが集まっている。自分自身、そのイベントに初めての日本人Gospel HipHop アーティストとして
参加したこともある。
また、NY、クイーンズでは”ER Room”というイベントが定期的に行われている。
こちらのイベントもアメリカ国内からアーティストが集まり、その熱気は表現できないほどである。
Freestyleコンペティションやブレイクダンス、ラッパーによるパフォーマンスなど盛りだくさんの内容
である。
ラジオでは95年あたりから”Gospel Vibration”というGospel HipHop プログラムが始まり、その流
れからNYやNJで多くのイベントが行われている。また、NYからバスで2時間弱の所にあるフィリーで
は”RockSoulEntertainment”というプロダクションがあり、HipHopにとどまらずR&B,Popsなど幅広
い層にGospelの本質を届けている。そして、フロリダでは”Fla.vor Alliance”がオーガナイズしている
Gospel HipHopイベントが行われ、特に”Fla.vorFest”にはアメリカ国内から多数のアーティスト達が
集まる。
このようにGospel HipHopの勢いは今も広がり続けている。
そして、今、海を越え、言葉の壁を越え、日本においてもそのムーブメントが始まっている。
日本語によるオリジナルなRap、ビート、ライムに込められた若者たちの心をとらえる一つ一つの言葉
言葉にはパワーがある。そしてずっと昔から今日まで、HipHopはそのパワーを言葉から供給され
続けている。
その言葉を通し "Gospel"にある真理を伝えていきたいと思う。


